キッチン風見鶏(森沢 明夫・ハルキ出版) 好きなように生きていい—港町の洋食屋がくれた言葉
メンタル繊細さんにおすすめポイント
- 大きな事件や強い刺激がなく、心がざわつかない物語構成
- 「自分のままでいい」とそっと背中を押してくれる言葉が散りばめられている
- 少し寂しさはあるが、読後に静かな希望が残るやわらかい余韻のラスト
あらすじ
港町に佇む洋食屋「キッチン風見鶏」。ここで働く坂田翔平は、漫画家を目指しながら、幽霊と会話ができるという不思議な力を持っています。店のオーナーである鳥居絵里は、まるでプロファイラーのような鋭い観察眼で、お客の体調や心の状態を見抜き、それに合わせた味付けで料理を提供する名手。
二人が切り盛りするこの店には、さまざまな人々が訪れます。絵里の母、姉夫婦の子を育てる男性、当たると評判の占い師・寿々、そしてこの世に未練を残した幽霊たち——。
物語は一話完結ではなく、登場人物一人ひとりの名前を冠した章で構成され、それぞれの人生や抱える悩みが丁寧に描かれていきます。彼らが「キッチン風見鶏」で出会い、静かに心を交わすことで、少しずつ自分自身と向き合い、人生を見つめ直していく——そんな優しい連作短編集です。
心のままに生きることを、そっと肯定してくれる物語
この物語には、派手な事件や劇的な展開はありません。けれど、だからこそ、登場人物たちの心の揺れや小さな変化が、より深く胸に響きます。
「俺の心に嘘をつかずに人生を創っていきたい」
「人生は短い、好きなこと以外している暇はない」
「心のままに生きなさい」
幽霊たちが語る言葉は、どれも少しずつ違いながら、根底には「自分の思うように生きること」の大切さが流れています。その“思うように”は人それぞれ。だからこそ、誰かの生き方がそのまま自分に当てはまるわけではない。でも、登場人物たちはそれぞれの形で、自分の人生を選び取っていきます。
読後には、静かな余韻とともに、少しの寂しさ、そして確かな希望が残ります。誰かの人生にそっと寄り添い、自分の心にも問いかけてくれるような、そんな物語でした。
静かな港町で、心に灯る“自分らしさ”を見つける一冊
この物語は、心のざわめきを静かに受け止めてくれるような一冊です。登場人物たちは皆、過去から抱えてきた悩みや葛藤を、港町の洋食屋「キッチン風見鶏」での出会いを通して、少しずつ見つめ直していきます。大きな事件は起こらず、感情の波も穏やか。だからこそ、繊細な心にも優しく寄り添ってくれます。
「自分の思うように生きる」という言葉が、幽霊たちの口から何度も語られるこの物語は、読者自身にもそっと問いかけてくるようです。誰かの生き方をなぞるのではなく、自分の心に耳を澄ませてみる——そんな静かな勇気をくれる作品です。
まとまった時間があるときに、ぜひ一気に読んでみてください。読後には、少しの寂しさと、でも確かな希望が残ります。
「風見鶏みくじ」も面白かった。
おみくじにラッキーメニューが書いてあるのよね。



