犬鹿

メンタル繊細さんにおすすめポイント

  • 感情の波が小さく、安心して読める物語 
  • アキコの「揺れながら、でも前を向いていく」姿
  • 静かな空間や食べ物の描写

あらすじ

母を亡くし、ひとりになったアキコは、母が営んでいた食堂を改装し、新しく小さな食堂を開くことにします。  

イメージしたのは修道院のような静かな空間。メニューはパンとサラダ、そしてスープだけという、シンプルで心落ち着く構成です。

店を切り盛りしながら、アキコは新しい人との出会い、これまでの関係との別れ、そして自分のルーツと向き合う日々を過ごしていきます。  

大きな波ではなく、日常の中にそっと揺らぎが生まれては消えていくような、静かな時間が流れていきます。

日常と少しの揺らぎ

母を亡くすという大きな喪失や、自分の生い立ちに関わる出来事が描かれているのに、文章は淡々としていて、読んでいるこちらの心も穏やかに保たれます。  

長年勤めた会社を思い切って辞める決断や、喫茶店を始める行動力も、迷いを引きずらずに進んでいく姿が気持ちよく映りました。

アキコは周囲からさまざまな言葉を投げかけられ、心が揺れる場面もあります。  

最初は「そうなのかな」と揺らぎながらも、最終的には静かに自分の軸へ戻っていく。その姿がとても自然で、芯の強さを感じました。  

悩みを頭の中心に置かず、片隅にそっと置いておくような、そんな生き方が物語全体に流れています。

終盤には大きな別れが訪れ、アキコも深く落ち込みますが、彼女は静かに、ゆっくりと立ち直っていきます。  その姿に、これからも「揺らぎ」は来るけれども、アキコは静かに受け流したり、自分なりの解決をして前を向いていくのだろうな、と頼もしさを感じました。

揺れながら進むやさしい時間

アキコの身に起こることは、特別ではないけれど、誰にでも起こりうる日々の出来事ばかりです。  

それらを飄々と、ときには少し揺らぎながら受け止めていく姿は、私たち自身の生活をそっと映し出しているようでした。

静かな日常の中にある強さや、揺れながらも前へ進むやさしい姿勢を感じられる物語。  

読み終えるころには、自分の暮らしを少しだけ丁寧に見つめ直したくなるようなお話でした。

犬鹿

終わり方も、ここで終わりなの?!と思うくらい普段の生活の中での終わりでした。