メンタル繊細さんにおすすめポイント
- 一話完結で感情を長く引きずらない
- 基本、主人公の定食屋「てしをや」内で進み、完結するため安心感がある
- 登場人物に嫌な人・敵対する人が出てこない
あらすじ
両親を事故で亡くし、両親の残した定食屋「てしをや」を妹と一緒に営む青年・哲史は、ある日神様に「妹との兄妹喧嘩」を相談したことをきっかけに、神様の“お手伝い”をすることになります。
その”お手伝い”とは、亡くなった魂を自身の身体に降ろし、彼らの「心残り」を料理を通して解消すること。
魂が語る後悔や伝えられなかった想いを聞き、哲史はその人が生前に作っていた「思い出の手料理」を魂の力を借りて再現します。
そして、ふらりと現れる魂の心残りの相手にその料理を振る舞い、魂の代弁者として言葉を届けることで、残された人の心をそっとほどいていきます。
優しさと人の温かさがじんわり染みる物語
「心残りを解決する」という設定だけでも優しい話なんだろうなと思いますが、実際に読んでみると、想像以上に優しくて温かい物語でした。
兄妹喧嘩に負けて神様に言いつけるしかない哲志のヘタレさや、意外と俗っぽい神様とのやりとりの微笑ましさが物語の柔らかいトーンを支えています。
毎回、魂が語る後悔は切なく、でもその想いを料理に込めて届けることで、残された人が愛情や励ましを受け取って前を向いていく姿に、涙がこぼれそうになります。
メンタル繊細さんに嬉しいポイントは、話が定食屋「てしをや」内で進むため、悲しみが長引かず、読者の心にも優しく寄り添ってくれる構成。
一話ごとに完結するので、感情の整理がつきやすく、また、基本的に登場人物が魂とその大事な人に限られ、嫌な人物や敵対するような関係の人が出てこないため、メンタルが繊細な方でも安心して読める作品です。
なお、1巻の第4話と第5話は続きものになっているため、時間のあるときにまとめて読むのがおすすめ。第4話のラストで事件が起こり、第5話でしっかりと解決されます。
癒しとおいしさが詰まった一冊
「神様の定食屋」は、人の優しさと手作り料理が心に染みる物語。亡くなった人の想いを料理に込めて届けるという設定が、読者の心にも深く響きます。
悲しみを引きずらず、毎話ごとに小さな希望が灯る物語は、安心して読める癒しの一冊。メンタルが繊細な方にも、ぜひおすすめしたい作品です。
「神様の定食屋」(中村颯希・双葉文庫)でした!