『月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった』感想(川代紗生・サンマーク出版|「自分は足りない」と感じる人に寄り添う物語【繊細さんは読むタイミングに注意】
繊細な人でも安心して読める?
安心ポイント★☆☆☆☆
- 主人公の苦しみをじっくり追体験する作品です。
- 暴力的な描写はありませんが、「自分は足りない人間だ」という主人公の思いが物語を通して丁寧に描かれます。
- 嫌な奴、出ます。
- 最後には主人公が「足りない」という思いに一つの答えを見つけていきますが、そこへたどり着くまでの感情の道のりは決して穏やかではありません。
あらすじ
主人公は桃子。独身で、結婚する相手も子どももいない自分を「足りない人間」だと感じながら暮らしています。
桃子が働くレストラン「雨宿り」では、店長の雨宮、常連客で僧侶の黒田とともに「元カレごはん埋葬委員会」を開いています。
失恋や忘れられない思い出を抱えた人が、思い出の料理を囲みながら気持ちを整理する集まりで、そこで生まれた料理が「雨宿り」の新しいメニューになることも。
相談者の話に耳を傾ける一方で、桃子、雨宮、黒田の3人も、それぞれ「自分は足りない人間」という思いを抱えています。
人の気持ちに寄り添いながら、自分自身とも向き合っていく物語です。
読んで感じたこと
この本は、表紙に惹かれて購入しました。
月のイラストから伝わる「しん……」と静まり返った夜の空気に惹かれ、静かで優しい物語を想像していたからです。
実際に読んでみると、その静かな雰囲気はそのままに、想像以上に心を揺さぶられる物語でした。
全部で7話からなるこの話は、それぞれに中心となる人物が出てきますが、根底には桃子の「自分は足りない」感が流れています。
そして主人公の桃子には、心が苦しくなる出来事が訪れます。
私は感情移入しやすいので、桃子の苦しみを自分のことのように追体験しながら読み進めました。
読んでいて何度も胸が締めつけられ、「早く桃子が自分を認められますように」と願いながらページをめくっていました。
だからこそ、最後まで読み終えたときには、桃子がたどり着いた答えに喜びながら、ほっとしました。
こんな人におすすめ
- 自分は何かが足りない」と感じることがある人
- 心揺さぶられることもあるけれど、自分自身とゆっくり向き合ってみたい人
- 心の成長を描いた物語が好きな人
- 食べ物がつなぐ温かな人間ドラマを読みたい人
一方で、登場人物に深く感情移入してしまう方や、心が疲れているときには少し重く感じるかもしれません。
この作品は、読み終えたあとに「私は私のままでいいのかもしれない」と、静かに考えさせてくれる物語です。
この作品で一番心に残ったこと
一番印象に残ったのは、「足りない」と感じているのは桃子だけではなかったことです。
店長の雨宮も、僧侶の黒田も、それぞれ心に埋まらない思いを抱えています。
人の悩みに寄り添い、励ましながら、実は自分自身も迷い続けている。
そんな3人だからこそ、「元カレごはん埋葬委員会」は、誰かの心をそっと受け止められる場所になっているのだと感じました。
物語の最後、自分自身の「足りない」という思いに向き合い、自分なりの答えを見つけていきます。
そして、自分だけが足りないわけではなく、誰もが何かしらの「足りなさ」を抱えながら生きていることに気づいていきます。
派手な展開ではありませんが、自分を受け入れることの難しさと大切さを静かに描いた作品でした。
読後の感想・まとめ
穏やかな月の表紙からは想像していなかったほど、心を深く揺さぶられる一冊でした。
読む人によっては、主人公の苦しみを自分のことのように感じ、途中で苦しくなるかもしれません。
それでも、「自分は足りない」と感じている人が、自分自身と向き合いたいと思ったとき、この物語は静かに寄り添ってくれるはずです。
読むタイミングは選ぶ作品ですが、だからこそ届く人には深く届く一冊。
気になった方は読むタイミングに気を付けて、ぜひ手に取ってみてください。



