『赤と青とエスキース』感想(青山美智子・PHP文芸文庫)|一枚の絵がつないでいく、静かな愛情の物語
繊細な人でも安心して読める?
安心ポイント★★★☆☆
登場人物同士が傷つけ合う場面は少なく、穏やかな空気の中で物語が進みます。
ただ、恋愛や人生のすれ違い、過去の出来事など、少し切なさを感じる場面もあります。
静かな物語を読みながら、登場人物の気持ちや人生についてゆっくり考えたいときに向いている一冊だと思います。
あらすじ
『赤と青とエスキース』は、プロローグ・4つの章、エピローグからなる連作短編集です。
それぞれの章は一話完結ですが、物語はゆるやかにつながっています。
そして、すべての章に共通して登場するのが、一枚の絵「エスキース」です。
その絵が誕生し、さまざまな場所へ渡り、そこで出会った人たちの人生に静かに寄り添っていきます。
一枚の絵を通して描かれるのは、恋愛だけではありません。
人から人へ受け継がれていく、さまざまな形の愛情が描かれています。
読んで感じたこと
読み終えて最初に感じたのは、「静かな物語だったな」ということでした。
青山美智子さんの作品は、悩みを抱えた主人公を周囲の人たちが丁寧な言葉で支え、救ってくれるような印象があります。
今回も主人公たちは、最後にはしっかり前を向いて生きていきます。
でも、今回は少し違うように感じました。
誰かに救ってもらったというより、主人公たち自身の心の中から、いつの間にか前へ進む力が湧いてきたように感じたのです。
それはどこから生まれたのだろう、と考えました。
もちろん、周囲の人たちの丁寧な言葉や愛情もあります。
でも、それ以上に「エスキース」という一枚の絵を、主人公たちがそれぞれ思い思いに解釈し、自分の力にしているように感じました。
同じ一枚の絵でも、見る人によって受け取るものは違います。
そして、その人がその絵から何を感じ取るのかによって、絵の意味も変わっていく。
そこが、この作品のおもしろさなのではないかなと思います。
こんな人におすすめ
- 静かで穏やかな雰囲気の小説が好きな方
- 絵画や美術館が好きな方
- 恋愛小説が好きな方
- 一話完結の物語を楽しみたい方
- 読後に優しい余韻が残る本を読みたい方
- 心を静かに整えながら読書をしたい方
登場人物同士が激しくぶつかり合うような物語ではなく、静かな時間の中で人と人とのつながりが描かれています。
この作品で一番心に残ったこと
一番心に残ったのは、無名の画家が描いた一枚の絵が、画家の想像もしなかった形で人々の人生に影響を与えていくことです。
一枚の絵が、さまざまな場所へ行き、そこで出会った人たちに、それぞれ違った形の愛情を生み出していく。
そして、その愛情によって人が動き、人生が少しずつ変わっていきます。
それは、絵を描いた画家自身も想像していなかったことなのだと思います。
さらに、そのつながりは画家がこの世からいなくなったあとも続いていく。
一人の人が残したものが、知らない誰かの人生を動かし、その人からまた別の誰かへと受け継がれていく。
そんな「人から人へ渡っていくもの」の美しさが、とても印象に残りました。
読後の感想・まとめ
『赤と青とエスキース』は、一枚の絵を中心に、さまざまな人の人生と愛情が静かにつながっていく物語でした。
読み終えたあと、なんだか美術館や画廊に行って、自分だけの「エスキース」を探したくなりました。
絵画は、描いた人が込めた意味だけではなく、見る人が感じたことによって、新しい意味を持つことがあります。
この本に登場する「エスキース」も、まさにそんな一枚の絵だったように思います。
登場人物同士が傷つけ合う場面は少なく、穏やかな空気の中で物語が進みます。心を静かに整えたいときにも手に取りやすい一冊でした。
静かな物語の中で、人と人との愛情やつながりを感じたい方におすすめです。



