この世にたやすい仕事はない 感想(津村記久子・新潮文庫)|変わった仕事と小さな謎を楽しみながら、自分の働き方を見つめ直せる小説
繊細な人でも安心して読める?
安心ポイント★★★☆☆
- 物語の中には、主人公や周囲の人に嫌がらせをする人物が登場します。
- ただ、主人公が一方的に傷つけられ続けるような展開ではありません。
- 登場人物のほとんどは穏やかな人です。
- 穏やかで変わった仕事を覗き見ている感じで気持ちのアップダウンは少なめです。
- そのため、私の「繊細な人でも安心して読める本」という基準では、安心ポイントは★★★☆☆としました。
あらすじ
「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね?」
主人公は仕事に疲れて退職した36歳の女性。
新しい仕事を探していた彼女は、紹介を受けて、さまざまな仕事を経験することになります。
最初に始めるのは、ある対象者を監視する仕事。
その後も、普段はあまり耳にしないような仕事をすることになります。
それぞれの仕事には、その仕事ならではの面白さがあります。
そして仕事をしているうちに、「あれ?」と思うような小さな違和感や謎が現れます。
大きな事件が起こるわけではありません。
けれど、その小さな謎が気になってしまい、
「どういうことなんだろう?」
と考えながら読み進めることになります。
5つの仕事を経験するうちに、主人公は以前の仕事について思い出すことも増えていきます。
そして、新しい仕事を経験する中で、自分の仕事への向き合い方についても考えるようになっていきます。
読んで感じたこと
まず興味をそそられたのが、紹介される仕事が、どれも普段なかなか聞かないような内容だったことです。
現実にはあまり耳にしないような仕事が登場するのですが、描かれ方が妙にリアルで、「こんな仕事をしている人が本当にどこかにいそう」と感じました。
でも、この作品にはもう一つ、読み進めたくなる理由があります。
それが、仕事の中に出てくる小さな違和感や謎です。
しかも、ミステリーといっても大きな事件が起こるわけではありません。
本当に小さなこと。
「なんだか変だな」
「どうしてこうなっているんだろう?」
という程度の違和感です。
ところが、その小さな謎が妙に気になるんです。
仕事の内容を楽しみながら、同時に謎の答えも気になってしまう。
この二つが組み合わさっているので、飽きずに読み進められました。
仕事に疲れて退職し職を探しているのに重たくなりすぎない。
そこがとても良かったです。
この作品で一番心に残ったこと
一番心に残ったのは、5つの仕事を経験することで、主人公が以前の仕事について少しずつ考え直していくところです。
最初は、新しい仕事をすることだけに意識が向いています。
けれど、いくつかの仕事を経験するうちに、以前の仕事を思い出すことが増えていきます。
そして、新しい仕事で感じたことをきっかけに、自分が以前の仕事とどう向き合っていたのかを考えるようになります。
穏やかな仕事を一つずつ経験していく。
その中で少しずつ自分を取り戻して、「自分はこの仕事がしたいんだ」と思えるところまで進んでいく。
その過程が、とても印象に残りました。
こんな人におすすめ
- 今の仕事に少し飽きている人
- 仕事に行き詰まりを感じている人
- 転職を考えている人
- 仕事に疲れて、少し距離を置きたい人
- 珍しい仕事の話を読んでみたい人
- 日常の中にある小さな謎が好きな人
- 大きな事件ではなく、小さな違和感を楽しみたい人
- 重すぎないお仕事小説を読みたい人
- 穏やかな雰囲気の小説を読みたい人
特におすすめしたいのは、仕事に飽きている人や、今の仕事に行き詰まりを感じている人。
そんなとき、この本でちょっと変わった仕事を覗いてみる。
すると、少し離れたところから自分の仕事を見ることができるような気がします。
読後の感想・まとめ
『この世にたやすい仕事はない』は、5つのちょっと変わった仕事を覗きながら、小さな謎を楽しめるお仕事小説です。
仕事の内容が珍しいので、それだけでも興味をそそられます。
さらに、それぞれの仕事の中に小さな違和感や謎が出てくるため、
「この先どうなるんだろう?」
と楽しみながら読み進めることができます。
そして5つの仕事を経験するうちに、主人公は以前の仕事を振り返り、自分の仕事への向き合い方を考えていきます。
私はこの作品を、穏やかな仕事をしながら、もう一度「仕事ができそう」と思えるようになるまでのリハビリのような物語だと感じました。
仕事に疲れている人に、「頑張ろう」と励ますのではなく、
「ちょっと違う仕事を覗いてみませんか?」
と誘ってくれるような一冊です。
大きな事件や激しい展開ではなく、小さな違和感と、ちょっと変わった仕事を楽しみたい人にもおすすめです。



