『とにかくうちに帰ります』感想(津村記久子・新潮文庫)|何気ない日常が愛おしくなる。「切ないくらいに、恋をするように、うちに帰りたい」
繊細な人でも安心して読める?
安心ポイント★★★★☆
- 『とにかくうちに帰ります』は、6編の短編小説で構成されています。
- どの作品も、特別に大きな事件が起こるわけではありません。日常のなんともない出来事が描かれているのに、なぜか続きが気になってしまいます。
- 主人公に対して、あからさまに嫌なことをする人も出てきません。大きな気持ちのアップダウンも少なく、落ち着いて読める作品でした。
とにかくうちに帰ります あらすじ
表題作「とにかくうちに帰ります」は、ひとことで言えば「豪雨の中、家に帰る人々の話」です。
ある日、激しい雨によって、いつも通勤に使っている公共交通機関が使えなくなります。
レインコートなどで完全防備をしていた人も、それすら役に立たないほどの豪雨の中を、ひたすら家に帰るために歩きます。
ある人は、偶然出会った会社の人と一緒に歩き、また別の人は、傘が壊れてしまった小学生に傘を買ってあげ、一緒に帰ることになります。
大きな出来事ではないけれど、それぞれが「家に帰る」という目的に向かって歩いていきます。
「切ないくらいに、恋をするように、うちに帰りたい」そんな思いを胸に。
読んで感じたこと
この本を読んで一番不思議だったのは、「何も起きていないのに、なぜか先が気になる」ことでした。
日常のなんともない出来事を描いているだけなのに、登場人物がちょっとしたことを気にしていると、こちらまで「どうなるんだろう」と気になってきます。
淡々としているのに、本人たちは静かにハラハラしている。
その感覚が読者にも伝わってきて、気がつけば私まで、大したことではないようなことを気にしながら読んでいました。
津村記久子さんの文章は、何もないように見える日常から、こんなふうに「気になる」を生み出すところが面白いなと思います。
この作品で一番心に残ったこと
「とにかくうちに帰ります」の中に出てくる、「切ないくらいに、恋をするように、うちに帰りたい」という言葉が心に残りました。
豪雨の中を、ただ家に帰るために歩いている。
それだけの話なのに、この言葉を読むと、「家に帰る」という当たり前のことが、とても大切なことのように感じられます。
日常のささやかな場面にスポットを当てることで、小さな幸福感を感じさせてくれる作品でした。
こんな人におすすめ
- 日常の何気ない出来事を描いた小説が読みたい人
- 大きな事件や激しい展開のない小説を読みたい人
- ちょっとクスッとしたい人
- 静かに楽しめる短編小説を読みたい人
- 普段の生活の中にある、小さな幸福を感じたい人
読後の感想・まとめ
『とにかくうちに帰ります』は、6編の短編小説からなる一冊です。
どの作品も、特別に大きな事件が起こるわけではありません。
それなのに、なぜか先が気になる。
淡々とした日常の中にある、人のちょっとした心の動きや、思わぬ人との関わりが描かれていて、読んでいるうちにこちらまでその出来事を気にしてしまいます。
表題作では、豪雨の中をひたすら家に帰ろうとする人々の姿を通して、人の温かさや、家に帰れることの幸福感が静かに伝わってきました。
大きな感動が押し寄せてくるわけではありません。
でも、読み終わったあとには、人の温かさや小さな幸福感が、かすかな香りのように漂ってくる。
そんな一冊でした。



