『ギャルにひかれて寺マルシェ』感想(宮島未奈・角川書店)|ギャル僧侶と大人たちの爽やかな青春
繊細な人でも安心して読める?
安心ポイント★★★★☆
- 気持ちのアップダウンは全体的に少なく、嫌な人もほとんど登場しません。
- 一度、真実子の姿や生き方に口を出してくる人たちが登場しますが、真実子自身が軽く受け流しているので、そこを引きずるような展開にはなりません。
- 5章から事件が起こるため、そこからは少し心配になる場面もあります。ただ、主人公たちがつらい目に遭い続けるような話ではなく、3人が前向きに動いていきます。
- 「嫌な人が出てきて、ずっと嫌な気持ちになる」というタイプの作品ではないので、繊細な人でも比較的安心して読めると思います。
あらすじ
30歳の英介は、父の死をきっかけに家の酒店をなんとなく継いでいます。
ある日、小中学校時代の友人・光司から、タイムカプセルを掘り起こしたいと相談されます。
タイムカプセルは、子どもの頃に寺へ勝手に埋めたものらしく、詳しい場所は子どもの頃に書いた適当な地図のみ。
埋めた場所を探すために寺へ偵察に行った英介を待っていたのは、同じく小中学校時代の友人・真実子でした。
ところが、真実子は昔とはすっかり変わっています。
なんとギャルになっているだけでなく、実家の寺で僧侶になり、ギャルメイクのままで法話までしているのです。
さらに真実子は、寺を盛り上げたいという思いから「寺マルシェ」まで開催しています。
真実子の熱意に影響され、英介と光司も寺マルシェで自分たちにできることを始めることに。
それは真実子を「ギャル僧まみたん」として売り出すこと。
3人は寺を盛り上げることができるのでしょうか。
読んで感じたこと
まず、「ギャルのまま僧侶になって法話をする」という設定が面白い。
私もこの謳い文句に惹かれて読み始めました。
でも、読んでみると、奇抜な設定だけを楽しむお話ではありません。
真実子が「寺を盛り上げたい」と動き始めると、その姿に英介と光司も影響されていきます。
3人ともフットワークが軽く、「自分たちにできることをやってみよう」と動いていく。
その姿がとても気持ちよく、30歳になった大人たちがキラキラと青春しているように感じました。
学生の頃のような青春とは少し違って、仕事やこれからの人生を考えながら、それでも自分が面白いと思ったことに一歩踏み出していく。
そんな「大人の青春」が、この作品の魅力だと思います。
英介自身も、なんとなく自分が継いだ酒店やこれからの仕事について見つめ直していきます。
心を揺さぶられるような大きな事件などはないですが、少しずつですが変わっていく3人を見るのが楽しく感じられました。
この作品で一番心に残ったこと
やっぱり、3人の行動力です。
「寺を盛り上げたい」という真実子の思いに、英介と光司も「力になりたい」と思います。
誰かに無理やり引っ張られるのではなく、それぞれが「自分も何かできるかも」と動き始める。
その軽やかさが、とても爽やかでした。
5章からは事件が起こり、物語の雰囲気も少し変わります。
繊細な方には少し気持ちがモヤモヤするかもしれませんが、3人はそれすらも爽やかに乗り越えていきます。
心配な方は5章から最後まで一気読みした方が安心かもしれません。
こんな人におすすめ
- 心穏やかに読める明るい話を探している人
- 爽やかな読後感の本が好きな人
- 大人の青春を楽しみたい人
- 前向きに行動する登場人物が好きな人
- 嫌な人がほとんど出てこない本を読みたい人
- 「ギャル×僧侶」という設定が気になる人
読後の感想・まとめ
『ギャルにひかれて寺マルシェ』は、とにかく「爽やか」という言葉が似合うお話でした。
めちゃくちゃ感動するというより、30歳の大人たちが楽しみながら一歩ずつ前へ進んでいく姿を、気持ちよく眺められるような作品です。
大きな気持ちのアップダウンも少なく、嫌な人もほとんどいません。
「今日は心穏やかに、明るい気分になれる本を読みたい」
そんなときにおすすめしたい一冊です。



